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5-6 汗はかくけど、口はださない。


 さて、ここで地方発の映画の撮影にまでこぎつけることができた要因について考えてみたい。
 まだ上映もしていない映画の成功要因なんて気が早いのでは、と思う方もいると思う。地方発の映画ビジネスという点では上映後の結果が肝要だということはよくわかっている。しかし上映はこれからだからその結果については、いまは何も言えない。
 しかし私たちは撮影まではこぎ着けたのだ。上映は目前に控えている。
 映画を作ろうという企画は、毎年、約一千本ほど出回るそうだ。その中から撮影することができる企画は半分以下の三百本くらい。さらに劇場にかかる映画はその中のさらに半分以下の約百本だという。
 ということは、映画の企画は撮影前にぽしゃるものがほとんどということになる。厳しい現状で、時間はかかったとはいえ、私たちは撮影を行うことができた。その要因を考えたってバチはあたらない。
 第一の要因は、地元の方との関係だろう。
 自分たちで企画をすすめなければならなくなってからというもの、私はたくさんの石川県の方々と会った。しかし誰ひとり嫌な人はいなかった。高飛車の人も、高慢な人も、恩義がましい人も、こざかしい人も自分勝手な人もいなかった。
 制作スタッフにもそんな人がいなかったと思う。
 類は類を呼ぶという。私はそれを絶対的な真実だと思っている。人生はすべて自分の合わせ鏡で、自分以上のことも、自分以下のことも起こらない。自分たちがちゃんとしなければ、ちゃんとした人とは巡り会うことはできない。
 石川県の人と、石川県のお金で映画を作っていこうとしたけれど、だからといって石川県の人からああしてほしい、こうしてほしいという要求は一切なかった。石川の方々は、県庁の堀岡さんも、北國新聞の稲垣さんも、冨士交通の藤岡さんも、映画の内容については一切口を出さず、制作スタッフにまかせてくれた。
 これは大きなことだと思う。素人の思いつきほど現場を混乱させるものはない。
 もし、そんな要求がたくさんでて、一つひとつを取り入れていたら、映画はつぎはぎだらけの、地元の人が自己満足するだけのものに成り下がっていただろう。
 また、石川県の人が、金はだし、汗はかくけれど口はださないからといって、制作スタッフは好き勝手をしたかというと決してそんなことはない。ロケ場所や能登の風習など、石川のことは石川の人に聞いて、その意見を尊重して創っていった。
 石川の人は映画のことはあまりよくわからない。映画のスタッフは石川のことはあまりよく知らない。ならば知らない部分や不得意な部分は互いに補っていっしょに創りましょうというのが、今回最後まで貫かれたスタンスだった。どちらが上でも、どちらが下でもない。同じ目標にむかって進む同士・・・。
 単純な話しだけれど、参加する人数の大きなプロジェクトほど、単純なことがむずかしくなる。
『能登の花ヨメ』の場合は、それが実行できた。俳優も含めた映画スタッフと、石川県の人とのつながりは当初の思いを遙かに超えるほど緊密で深いものになった。
 大江千里さんが創った映画の主題歌「始まりの詩、あなたへ」を岩崎宏美さんが歌うことになり、岩崎さんはキャンペーンで何度か金沢入りをした。
 岩崎さんは金沢入りをするたび、地元の方と映画スタッフのつながりの強さに感動して、私ももっと早くこの企画にかかわることができたらよかったのにとおっしゃってくれた。また、遅れを取り戻すために、可能な限り、何度でも金沢や能登へ通いたいとおっしゃってくれた。
 岩崎さんの言葉と想いは、プロデューサーとして本当にうれしかった。

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