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5-2 撮影終了後に北國新聞を訪れた理由。


 撮影が終了した翌週に、溝上さんと私は北國新聞社の稲垣さんを訪れた。
 ある相談をするためだった。
 まずは無事に撮影が終了したことを報告し、これまでの応援と熱烈な報道に感謝の言葉を述べた。
 本題はその先にあった。
 まだ若干資金が不足している事実を告げたうえで、製作委員会のメンバーに入ってもらえないかと相談したのだ。
 北國新聞社にとっては悪い話ではない。
 製作委員会に入るリスクは責任問題が発生することだろう。責任問題で一番こじれるには、撮影に入る前に事業が頓挫して、それまでの負担をどう処理するかという問題だそうだ。
『能登の花ヨメ』の場合はすでに映像を撮り終えている。リスクといえば、不足している資金を製作委員会のメンバーでどう工面するかを考えていくことだけだ。それで『能登の花ヨメ』という映像コンテンツを主体的に、確実に活用していけるのだ。
 ましてや『能登の花ヨメ』の場合、大阪のF氏に借りている一千万円を除けば、文化庁や奥能登開発基金などの公的資金と、返却義務のない企業協賛金で製作費をまかなっていた。
 つまり上映後の売り上げは、約半分が劇場、約四分の一を配給会社がもっていくとしても、残る約四分の一はほぼ利益として計算でき、製作委員会のメンバーで分配できるのだ。
 製作委員会の申し出とそのメリットを聞いた稲垣さんは喜んでくれた。同時に疑問も抱いたようだ。
「どうしてそんないい話を譲ってくれるの?あなたたちで儲ければいいんじゃないの?」
 儲けるという点でいえば稲垣さんの意見は真っ当だろう。
 撮影も終了した。配給会社も決まった。あとは上映後の、ころがりこんでくる利益を計算して喜んでいればいい。
 私たちはそうはしなかった。
 お金のことなら利益の何パーセントかはプロデューサー費としてもらうことができる。ビジネスマンとしては金を儲けることは大切かもしれないが、それ以上にプロデューサーとして挑戦したいことがあったのだ。
 新しいビジネスモデルを立ちあげたかったのだ。本当の意味で石川県発の映画をつくりたかった。究極を言えば石川県の財産になる映像コンテンツをつくりたかったのだ。
 地方を舞台にした映画はたくさんある。いや、地方映画花盛りといっても過言ではない。しかしそれは物語と舞台を地方にしているだけで、実は中央の資本で、中央主体でつくられているものがほとんどだ。
 すると利益は中央にしか落ちない。映像コンテンツの利用も中央主体ということになる。地方の映画のはずが地方の財産とならないケースが多いのだ。
『能登の花ヨメ』ではこの矛盾を打破したかった。
 私たちがめざしたのは、石川県の行政や企業や支援者をネットワークして、資金を含めた製作と制作の環境を整えていく。石川県の資本で、石川県の人とつくっていく。中心になるのが製作委員会で、撮影終了後は製作委員会が『能登の花ヨメ』という映像コンテンツを管理して全国へ発信していく。
 利益も石川県に落ちる。メンバーが石川県の企業なら、利益の一部を震災復興に活かすという案も賛同を得やすい。撮影し終えた映画が、石川県や能登のために役立たなければ、この映画の存在意義がなくなってしまう。
 誰に迷惑をかけることもなく、うまく利益を生み出して、この試みが成功すれば地方映画の新しいビジネスモデルになるだろう。石川県の成功は他の地方にも波及して、自分たちの手で自分たちの映画をつくろうという積極的な動きに拍車がかかるはずだ。
 地方の時代といわれている。文化もどんどん地方から全国へ発信していくべきなのだ。
 その意味でも製作委員会のメンバーには地元の有力企業に参加して欲しかった。
 そう説明すると、稲垣さんは
「よくわかりました。そこまでお考えでしたか。ありがとうございます。さっそく社長に話してみます。社長も喜ばれると思います」
 と理解を示してくれた。
「しかしよくここまでやりましたな。正直なところいつかはポシャると思ってました。いや、めげない勇気というものがあるんですね。勉強になりました」
 そうおっしゃっていただけたけれど、資金面でここまでくるのは本当に大変だった。

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