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5-1 撮影することが目的ではない。


 撮影が終了した翌日、溝上さん、亀田さん、私のプロデューサー陣は、輪島市、珠洲市、穴水町の役場を訪ねて、市長や町長にお世話になったお礼を申しあげた。そして私はエスティマを運転して大阪へ戻った。
 エスティマは私の仕事関係の師匠筋にあたる制作会社の社長から借りたものだった。
「撮影中は一台でも車が多い方が便利だ。あんたも車でおいでや」
 かねがね白羽監督からそういわれていた。
 その言葉を真に受けていた私は小山社長に相談した。自動車メーカーの仕事を主にしている小山社長は、わかったの一言でエスティマを一台用意してくれ、無料で貸してくれたのだ。
 大阪に戻り、エスティマを洗車して返却したとき、小山社長は
「大きな仕事をしたな。ご苦労さま」
 と私をねぎらってくれた。
 この一言はありがたかったけれど、ご苦労といわれるのはまだ早いと私は心のどこかで思った。
 苦心惨憺して撮影に入った。地元の方々も応援してくださった。新聞やテレビでは連日のように熱烈な報道をしていただいた。おかげで石川県内の人で『能登の花ヨメ』の進捗状況を知らない人はいないんじゃないだろうかというほど知名度はあがった。
 北國新聞に毎日のように掲載される『能登の花ヨメ』の記事を読みたいといって、能登地方では北國新聞を取りはじめる家も多数あったという。
 映画の撮影は祭りに例えられる。
 大勢の人間が参加して一つの物語を撮影していく。連日、現場は熱くなり、一日なんてあっという間に過ぎてしまう。
 撮影が終わると、訪れるのは祭りの後の淋しさだ。潮が引いたように熱も汗も叫びも彼方へ消えると、仕事に比例した大きさの穴が身体や心のどこかにぽっかり開いたようになる。
 しかし撮影の完了は映画の終わりではないのだ。
 特にプロデューサーにとってはそうだ。私たちにはまだまだやることが残っている。
 編集をする一方で、配給会社と打ち合わせてプロモーションのことを考えなくてはならない。映画は撮影するのが目的ではなく、上映して一人でも多くの人に観てもらい、観た人が能登の魅力を再発見してもらうことが私たちの目的であり、映画を観て一人でも多くの人が能登を訪れてくれることが私たちのめざす成果なのだ。

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