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4-6 主演女優が決定。


 脚本の印刷アップを待ってからキャスティングにかかっていたのでは十月の撮影に間に合わない。
 溝上さんと亀田さんはハコ書段階の、とはいえかなり完成に近づいた段階のハコ書原稿をお目当ての俳優さんの事務所へ届けることにした。
 前回の『海辺のテーブル』は遠く離れた父と娘の物語だった。今度の『能登の花ヨメ』は百八十度変わって、都会から来た嫁と姑の物語。
 東京で挙式の予定だった若い女性が、夫となる人の母親が交通事故でけがをしたため、海外出張の“夫”に代わって“母”の世話をするために能登へ行く。その能登で、地震に遭ってもめげないで生きる、たくましく、あかるい人々を知る。ぶっきらぼうだけれども、人を慈しみ、自然に感謝して生きる豊かな心を持っていることに気づき、女性の人生観が変わっていく。
 主人公の嫁役には田中美里さんを考えていた。
 ハコ書きを届けた段階で田中美里さんの事務所からは了承の返事が届いた。
「私が演じることで石川県のお役にたてるのならこんなうれしいことはない。ぜひとも参加させてください」
 とても前向きなメッセージも寄せられた。
 問題は“母”を演じる俳優さんだ。
 能登という地で子供を育てあげ、いまでも一人でたくましく生きている女性。やさしいだけではいけない。たくましさときびしさの奥にやさしさをたたえた女性が理想だ。
 溝上さんと亀田さんは泉ピン子さんの事務所へハコ書きを持ち込んだ。
 私はその話を聞いたとき、正直にいって無理だと思った。
 国井さんのおかげだけれど脚本はとてもいいあがりになっていた。しかしテレビであれだけ人気の泉さんだ。スケジュールの調整がつくわけがない。
 ところが返事は
「前向きに検討したい。詳しい話しを聞きたい」
 といううれしいものだった。
 本来なら泉さんは十月の一ヵ月間をオフにするつもりだったそうだ。
 たまたまスケジュールが空いていた。そこへ心動かされる脚本が届いた。また、泉さんは本格的に映画と取り組みたいと思っていた時期でもあった。
 そんな偶然が重なって泉さんはとても前向きになってくれた。
 最後に泉さんの気持ちを押したのは、やはり映画で震災復興に取り組むという姿勢だった。
 泉さんは小さい頃から芸人として苦労されて今日の地位を築いた方。人の苦労には人一倍敏感なんだと思う。困っている人がいたら、自分にできることは何かを常に考える人なんだろう。それも泉さん流のやり方で。
 たとえば伸び悩んでいる若い俳優がいたとする。普通なら相談に乗ったり、やさしい言葉で励ますところだけど、泉さんはあえて厳しい言葉を投げてステップアップするきっかけをつかませようとする。それが泉さん流のやさしさだ。
 新潟県中越沖地震のときもそうだし、能登半島地震のときも泉さんは自分のやり方で被災者を応援していた。
 途中で役職を放り投げてしまったどこかの国の総理大臣とは違って、自分を全面に押しだすことを目的としたパフォーマンスなんて絶対にしない。
 泉さんの名前で義援金を送るとニュースになってしまう。
 泉さんは電話をかけるだけでその電話代の一部が義援金になる番号があると知ると、撮影が終わって家に戻ると毎晩のように電話をかけていたそうだ。
 それも一回や二回ではない。日に何十回も。それを何日も。
 そんな泉さんだから、自分が出演した映画が震災復興の役に立つのであれば、万難を排してでも参加したいと力強くおっしゃってくれた。

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第4章 地震が能登を襲う。」カテゴリの記事

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