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2-9 謎の中東人、登場。


 監督と私が石川県入りすると必ず寄るのが石川県庁の堀岡氏のところだった。
 能登の知名度があがり、能登空港の利用が促進されるのならどんな協力もおしまないと、堀岡氏は私たちの無理なお願いにも首を横に振らず汗をかいてくださる。
 また、文化庁の助成金が降りたらという前提で
「国が支援する映画なら県としても放っておくわけにはいかん。奥能登開発基金からお金を捻出するよう知事に陳情する」
 といい、知事から一千万円の補助金をだす了解を取り付けてくださった。
 それだけではない。映画の記事を書くように地元の新聞社に働きかけてくださったり、石川県や東京の優良企業を紹介してくださったり、外様の私たちではどうすることもできない案件の数々も
「うむ、やってみるわ」
 といって叶えてくださる。
 間違いなく堀岡さんがいなかったら『能登の花ヨメ』は陽の目を見ることはなかったといえる。
 七月二十四日の午後、堀岡さんから電話が入った。
「明日、私の友人の藤岡さんという人が大阪で講演をするので、その前に会って映画の説明をしてもらえんやろか。昨日の夜、藤岡さんに映画の相談をすると面白そうだと乗り気なんや」
 藤岡さんとはニューヨークに在住している投資アドバイザーだそうで、投資アドバイザーといえば金融のプロ中のプロ。しかもニューヨークで、ニューヨーカーを相手に仕事をしているとなれば世界規模のノウハウを持っている人物ということになる。
 運よく大阪で投資に関する講演会を行うので、その前後に私たちに会う時間をつくってくれることになった。
「初対面ですけどわかりますかね」
「大丈夫や。アラブ人みたいな大男で口髭をはやした人がおったら、それが藤岡さんや」
 その言葉を頼りに指定されたヒルトンホテルへ向かうと、本当に中東人みたいに大柄で、りっぱな口髭をたくわえた人がいた。藤岡さんだった。
 藤岡さんはニューヨークで投資アドバイザーをする一方で、石川県にある観光バスの会社「富士交通」の会長も務めている。その関係で年に何度か金沢へ戻ってくるそうだ。
 今回は十日間という短い滞在で、今日、大阪で講演をすませると明日の飛行機でニューヨークへ帰るという。
 少し遅れてやってきた白羽監督とふたりで映画についての説明をした。藤岡さんは映画に関する投資は扱ったことはないが興味はあるという。
「いくら必要なんですか?」
「一億です」
「一億でいいの。それで映画ができるの」
「ハリウッドとは違いますから」
「一億なんてすぐ集まるでしょ。ファンドを組めば一発です」
「だからハリウッドのような映画ではないもので・・・」
 藤岡さんのいる世界や藤岡さんが扱う投資金額が桁違いだったので、はじめはなかなか話しが噛み合わなかった。
 それに日本の映画界ではファンドを組んだ実例はあるものの、まだ一般的な資金集めの手法にはなっていなかった。できればファンド以外の方法で資金を調達していきたいというのが私たちの希望だった。
「わかりました。ちょっと考えてみましょう」
 と藤岡さんはおっしゃって、ニコっと笑った。笑うと子供のような目になる人だった。
 藤岡さんは不思議な人だった。関西にも関東にも、もちろん金沢や能登でもおめにかかったことのないタイプの人だった。
 強いていうならこれがニューヨーカーというものなのだろうか?
 つねにジョークを交えた会話を展開するのでどこから本気でどこから冗句なのかわかりかねることがあった。「ノープロブレム」「問題ない」を連発して、自分が関わる物事はすべてうまくいくと、あの白羽監督を上回るポジティブ志向の人だった。その自信の出所がわからないから、正直、私は軽い混乱を覚えた。
 その翌日、白羽監督は自分のブログにこう書いた。
「神降臨か、真夏の夜の夢か。来週金沢へ。ジャジャーン」

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