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2-5 タイムリミットは訪れる。


 時間は誰にも平等に訪れ、そして無慈悲に過ぎていく。
 一億円のめどを二週間でたてようと企てる方が無理な話だったのだ。
 案の定というか、お決まりといおうか、東京でも大阪でもさまざまな人にお願いをしたけれど、あまりにも時間がなさすぎた。相手が検討している間に二・三週間なんてあっという間に過ぎていってしまう。
 五月が終わって確約されたお金はF氏の一千万円だけだった。
 私たちに残された道は二つだった。傷ものと呼ばれる覚悟で撮影の延期を決めるか、企画そのものをあきらめるか。
 白羽監督はぜがひでも実現させたいだろう。その気持ちは痛いほどわかる。わかるけれど現実に目をやれば、延期をしたとしてもお金が集まる保証はどこにもないのだ。
 藤さんのこともある。溝上さんは重い足取りで藤さんの事務所へ向かった。
 ご好意で五月いっぱいまで時間をいただいたけれど、めどをたてることができなかったことを溝上さんは藤さんに詫びた。
 するとまたしても思ってもいなかった言葉が藤さんから漏れた。
「私は待っています。満足のいく脚本があがり、撮影ができる日を待っています。それが一年先になるのか、二年先になるのか、十年先になるのかわかりませんが待っています。そしてそのときはどうか真っ先に私に声をかけてください。最優先してスケジュールを調整します。雄一郎役は私がやります。それを忘れないでがんばってください。そしてこれからも私の名前でお役にたてるならどんどん使って資金を集めてください。期待しています」
 事務所からの帰り道、溝上プロデューサーは藤さんの言葉に男泣きをしたという。白羽監督から電話でその話を聞いた私も泣いた。
 傷ものといわれても仕方がない企画に藤さんはそれほどの想いを抱いてくださっているのだ。ありがたい。
 悲観的な空気に包まれていた私たちに、藤さんの言葉が一条の光をもたらしてくれた。
「撮影は来年に延ばしましょう。時間があるから脚本を抜本的に見直しましょうか」
 溝上さんの提案に意義を唱える者はいなかった。
 問題は製作費である。
 今回の映画製作費は一億円を予定していた。
 文化庁が毎年、映画や舞台に助成金をだしている。助成金が降りたとしても最大で製作費の三分の一。通常は満額の七十パーセントが相場という。
 F氏の一千万円と助成金が降りたとして二千万円。残り七千万円を集めなければ撮影に入ることはできない。
 私たちの前に突きつけられた現実だった。

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