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1-6 映画はまずホンありき。脚本家は誰だ。


 プロデューサーの溝上さんが所属する近代映画協会は、二〇〇八年現在、日本最高年齢の監督、新藤兼人氏が興した制作プロダクションだ。
 創業して約半世紀になる。「近代映画協会」の歴史は、日本映画独立プロダクションの歴史ともいわれる老舗の制作会社だ。
 歴史があるだけではなく、『原発の子』『裸の島』『鬼婆』『ある映画監督の生涯〜溝口健二の生涯』『午後の遺言状』などの名作や話題作を発表して、いまもなお積極的に映画を制作している。
 新藤兼人氏が日本を代表するシナリオライターでもあることから、近代映画協会の映画づくりには“映画はまずホンありき”という姿勢が貫かれている。
 映画業界には、一スジ、二ぬけ、三役者という言葉があるという。
 映画の父、牧野省三氏が残した言葉で、映画はまずスジ、つまりストーリー、次にぬけとは絶妙なカメラワーク、そして三番目に役者だというのだ。その考えを地でいくのが近代映画協会で、脚本づくりにはこだわって、こだわって、こだわりぬくという。
 さらに脚本の出来はキャスティングに大きく影響していく。
 映画の場合、俳優は脚本を読んでから出演を決める。人によってはギャラよりも脚本の内容を重視する。脚本に動かされたり、出演することで今後の自分にプラスになると判断すると、たとえ厳しい出演料やスケジュールでも首を縦にふる。
 逆に脚本に魅力がなかったり、出演する意義を見いだせなかった場合は、いくら金を積んでも了承しないこともあるという。脚本は映画の命ともいえるのだ。
 企画開発費も捻出されたので脚本作業にかかることができる。さて、脚本家を誰にするか。
 白羽監督はある人を想定していたようだ。しかし溝上さんはこう考えていた。
 能登の新しいイメージを形成する映画なので、脚本家選びも新しい観点で選んでもいいんじゃないだろうか。いわゆるこの人ならこうあがるだろうと想像のつく人〜ある意味安定しているということなのだが〜に依頼するより、冒険かもしれないけれど新しい人に頼もう。
 溝上さんが白羽の矢を立てたのが、国井桂さんだった。
 国井さんは一度、保険会社に務めた。しかし書きたいという情熱は消えることがなく、専門講座で学んだ後にシナリオライターに転身した。一九九七年に深夜ドラマで脚本家デビューをしてからはテレビドラマを中心に自力をつけた。映画の方でも、『修羅雪姫』(二〇〇一年)、『オシャレ魔女ラブandベリー/しあわせのまほう』(二〇〇七年)、「夕凪の街 桜の国」(二〇〇七年)と着実に実績をあげている。
 右肩あがりの脚本家だけに多忙な国井さん、予算が潤沢ではない企画なのに私たちの申し出を快く了承してくれた。
 脚本家が決まった。
 白羽監督、溝上さん、亀田さん、そして国井さんがまず取りかかったことは、能登の魅力をリサーチするためにシナリオハンティングの日程を調整することだった。

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