1-4 自ら出演交渉をする。
会議は前向きに、和気あいあいと進んでいった。
ところがそろそろ終わろうという頃になっても、A氏はいっこうに例の話しを持ち出してくれなかった。
私の映画出演の件である。
映画にでることができるのかできないのかが、その日の私のメインテーマでもあったのだ。
しびれを切らした私は勇気を振り絞って自分から口火を切った。
「あの、ひとつお願いがあるのですが」
「はい?」
白羽監督が怪訝そうな顔をする。溝上さんも亀田さんも何をいいだすのやらと私をみる。
「企画書づくりでも広告づくりでも何でもしますから、あの、映画にだして欲しいのですが・・・」
「役者・・、ということですか?」
白羽監督がつめよる。
「いえ、そんな大層なことでなくていいんです。ちょい役でもワンカットでもいいんです。夢なんです。映画のエンディングロールがあるでしょ。役者の欄に自分の名前がでることが前からの夢だったんです。そのためだったら何でもしますから・・・、ダメでしょうか」
「役者の経験はあるのですか?」
「いえ・・・」
「演劇部にいたとか?」
「まったく・・・」
「映画青年でしたか?」
「文学青年でしたけど・・・」
溝上さんがにっこり笑って白羽監督と私のやりとりをみている。亀田さんは少々あきれ顔だった。
「その代わり何だってしますから。チケットも買いますから。一千枚、そう一千枚は買いますから」
「一千枚、それはすごい」の
と溝上さんは笑いながらいった。
「わかりました。役をつけましょう。それでがんばってもらえるのならお安い御用です」
「本当ですか!ならば気の弱いチンピラ役か、バーのおかまのマスター役なんてどうでしょう?」
調子に乗っていった私に白羽監督がピシャリと
「あなた、変な映画の見過ぎじゃないですか?第一、そんな人は今度の映画にでてきません」
といってみんなの笑いを誘った。
やれやれではあるけれど、私はなんとか出演交渉を果たした。監督が役をつくるといったのだから、私は必ず出演できるのだろう。
銀幕デビューか。そう思うと頬が緩んでくるのだった。
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