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1-13 そしてキャスティングへ。


「海とキリコとアオイ」は、能登で伝説の料理店を開いている男が主人公。世界中を放浪してあらゆる料理を取得したうえで、たどりついた能登の地に惚れ込み、店を開いた男だ。腕は確かで、どんな料理をオーダーされても、いとも簡単にとびきりの一品をつくってしまうが、頑固で無愛想。しかし情は深い。
 そこに東京から新米の料理ジャーナリストの若い女性が取材にやってきて、主人公や能登の人々とふれあう。そのなかで若い女性は、利便性や経済性を優先する都会の暮らしで失われたものを再発見していくとともに、現代人が見落としてきた自然への畏敬、人間らしく心豊かに暮らすことの大切さをみいだしていくという物語。
 このふたりの配役をどうするかが今回の映画の大きなポイントとなる。
 キャスティングで大切なのは「納得と驚き」だ。
「ああ、あの人が」とみんなが納得する一方で、「えっ、あの人が」というサプライズがあってはじめて、映画への興味も映画の感動も生まれてくる。
 主人公役にはさまざまな候補があげられたが、そのなかでもベストと思える俳優が出演を了承してくれた。
「どえらい人がオーケーしてくれた」
 白羽監督は大阪にいた私へ興奮気味の声で電話をしてきた。
 その名は、藤竜也。
 日活の映画『望郷の海』でデビューして以来、映画を主軸に俳優活動をしてきた。日本映画界の大物にして、まだまだ精力的に映画やテレビに出演している。   
 実はキャスティングの会議で候補にあがってはいたものの、私はまさかオーケーしてもらえるとは思ってもいなかった。予算も厳しい、スケジュールも厳しいからだ。
 しかし溝上さんが藤さんの事務所へ脚本を送ると、まもなくして詳しい話を聞きたいという返事があり、実際に事務所に伺って企画の意図を説明すると出演オーケーの返事が届いたのだ。
 承諾の裏には、藤さんの能登への思いもあったという。
 藤さんはこの前の夏に能登半島をひとりで旅したそうだ。そこで出会った風景や人に強く心をうたれ、能登の魅力にどっぷりはまったという。さらにラッキーなことに、八月の藤さんのスケジュールが奇跡的に空いていた。そんな折りに能登を舞台にした映画の企画が舞い込んだのだ。
「全力で取り組みます。いい映画にしましょう」
 藤さんのそんな言葉を伝え聞いた私たちは、喜びに身を震わせた。

・・・第1章終了。

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