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1-12 印刷台本が完成。


 二〇〇六年、新しい年を迎えた。
 一月の終わりに、撮影中の亀田さんを除く主要メンバーが揃って大阪で新年会を開き、気合いのこもった決意を確認した。
 この十二月から一月にかけては、東京で頻繁に脚本会議が開かれていた。
 そこは近代映画協会、脚本づくりに妥協はない。時間がかかっても納得のいく“ホン”になるまでは何度も書き直していく。
 そして二月二十四日。ついに印刷台本があがった。大阪の定例会議のときにB氏が刷りたての、まだ湯気がでていそうな台本を持ってきてくれたのだ。
 会議テーブルにど¬ーんと積まれた三十冊の印刷台本。
 まだ準備稿と印刷されているけれど、私にとっては初めてみる本物の印刷台本。いままでのパソコンの出力紙とは言葉の重みが違ってみえるのは気のせいだろうか?
 筋肉は鍛えれば太くなる。足腰は走り込めば強くなる。脚本も同じとはいえ、いうだけならやさしいし、誰にでもできる。
 何もないところからここまでカタチにするのに、脚本家の国井さんは何度描き直し、真夜中に何度呻吟したことか?業種は違うとはいえ、物を書くことを生業としている私は国井さんの苦労がわかるので、テーブルに積まれた印刷台本をみていると、身体の奥から込みあげてくるものがあった。
 パラパラとめくっていると私のシーンもちゃんとあった。
 地元の釣り好きの電気屋、西田。セリフも三つくらい用意されていた。
「いよいよここからはじまるのですね」
 A氏も感慨深い声でいった。
 そう、印刷台本があがるまでに時間はかかったけれど、やっとここからはじまるのだ。キャスティング作業にかかれるのだ。
 出演する俳優は誰か?映画のなかで俳優が占める割合は大きい。
 とくに出資者を募る場合、どんな映画かと問われた次には、誰がでるのかと必ず聞かれる。出演する俳優が決定していない映画に資金を提供しようという人は稀だ。
 製作を担当するA氏にとっても、俳優が決まらない間は行動しずらい状況にあったと思う。いよいよここからという言葉は、A氏やB氏の正直な気持ちだと思う。
 白羽監督や溝上さんにしてもそれは同じことだろう。
 五月の撮影まで残された時間はあまりない。キャスティング作業にかかり、制作スタッフを集めるなど、しなければならないことは山積だ。
 印刷台本の完成は、まさにはじまりなのだ。
 その日の定例会議ではA氏を中心にそのことが確認され、これからに向けての決意を新たにした。それぞれの役割を全力で取り組み、スケジュールの遅れを取り戻すことで意見が一致した。

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